関西兄弟in日本橋

奈良県はパソコン保有率日本一(2009年)です。
 その事にちなんで、数年前の関西兄弟を書いてみました。
 日本橋は「にっぽんばし」で大阪の電気街を指します。東京の日本橋とは違いますのでご注意!

 日本橋のマクド(マクドナルド)で、三人は顔を突き合わせていた。
 一人は眼鏡をかけた派手な洋服の男。もう一人も眼鏡だが、デザインがいかにも古臭い紫の和服。この二人は長髪である。唯一裸眼なのは洒落た服を着こなす男。よく見れば、後の二人は顔立ちがそっくりである。
 派手な服の男がビッグマックを頬張りながら、「やっぱりヨドバシやろー」と日本橋の大きな家電店を口にする。
「それやなかったら何で大阪まで来るんどすか」
 とっくに承知済みの事に、洒落た男が嫌味で返す。
 和服の男は「せやねー」とどちらともつかぬ相槌を打つ。
 簡単に紹介してしまうと、派手な服の男は大阪府の具現化、水都である。洒落た男は京都府の具現化、美琴である。和服の男は奈良県の具現化、八重である。
 歴史がやたら古い三人が何をしに来たかというと、パソコンを買いに来たという今どきの理由である。
 実を言うとこの爺・・・いや、奈良県、パソコンの保有率日本一で、歳に似合わず結構使いこなしていたりする。その癖著名な産業になっていないというのは、奈良県の県民性という奴だろう。携帯でメールすら送れない京都はハイテク企業が多かったりするのもしかり。
「二人はパソコンで何したいん?」
 八重はポテトを抓みながら問う。
「何するって?」
 水都の問い返しに「仕事用とかプライベート用とかによって機種変わってくるし。その中の目的によっても変わってくるで」と云う。
「そんなん全部同じちゃうんか?」
「そう思うんなら何で僕をわざわざ呼んだんや」
 矛盾した行動に水都はぐっと親指を立てる。
「一緒に買いに行った方が、何か困った時聞きやすいやろ?」
「ググれ!」
 思わずネット用語を使ったので、さっぱり意味が通じなかった。しかし、雰囲気で分かると思うぞ、雰囲気で。
 説明書もろくに読まずに質問の電話がかかってくるであろう未来が簡単に想像できたが、とりあえず脇に置いておく。ついでに水都が何をやりたいかという話も脇に置いておく。後で散々聞けそうだし。
「美琴は何がやりたいん?」
 迷いのない目。
「ラグナロクオンライン」
「・・・・大丈夫かな」
 最初っからゲームするつもりな(八重が主張するところ)弟に「ネトゲ廃人」という言葉が脳裏をよぎる。
「いえ、そんなにハマる気はおへんから大丈夫どす」
 空気の読める発言だが、彼のハマっていったゲームタイトルを脳内で羅列する作業を八重は止められない。
 両方買わない限りは起こらない事態であるが、日本橋まで来て「買うな」とも言えない。しかも自分は使っているし。
 まあ、行こうか、と席を立った。三人に、マクドのお姉さんの陽気な「ありがとうございました」の声がかかった。

 それから数年・・・。
 水都は予想通りの結果であったが、美琴は廃人レベルではないハマり方をしたという結果に、八重が胸を撫で下ろしたのもつかの間。
 せんんとくんストラップの付いた携帯が鳴るので取る。着信には「結」より。
「お爺ちゃんー、ちょっと今から言うお店の地図ネットで調べてくれんねー?」
「いい加減パソコン買いや・・・」
「いや、あんまり使わんしー」
「今間接的に使ってる。今」
 パソコン保有率最下位の沖縄からの調べてコールがしょっちゅう鳴る事態に、ひっそり「詳しくはWEBで!」が定着した時代を恨む八重であった。