健康ランドで見かけた子連れを関西兄弟に変換してみた


 時は奈良時代、八重こと平城京は軽く頭を痛めていた。
 些細なことである。そしてよくあることである。
 しかし、頭が痛いのは乗せている大きな冠のせいだけではない。
「あーにきー! だっこしてやー!」
 最上位の位を示す紫の衣は当然の事である。
 日出国を全て支配下に置く彼は、土地の中では最高権力者である。
 侵略と支配を繰り返す都とは彼の事だ。
 しかし、幼い難波こと水都には、通じない。
 彼にとってはこの辺り一帯の土地たちの兄である。今、土地の化身達が生まれて消えてを繰り返している。その中での若い支配者は親である。親には甘えて当然である。
 つまり抱っこを要求して当然である。
 それはそうなのだが・・・。
 八重は紫の衣をぎゅうと掴む小さな手を見た後、少し先を歩く小さな背をちらりと見る。
 前には平城京の副都たる平安京、美琴がいる。
 人間ならば五歳ばかりの二人は平等に扱わねばならない。(成人するとこの精神が薄くなる事を彼らはまだ知らない)
 さて、手は二本。五歳児というのはなかなかに重量があり、最低二本必要である事は考えるまでもない。
 分かりやすく要求してくる水都と違い、美琴は遠まわしに遠慮がちに要求する性格だ。
 かと云ってないがしろにすると本気で拗ねる。
 水都の「抱っこ!」という要求に八重が簡単に応じられない理由はもうお分かりであろう。
 しかし水都は引かない。
「だっこ! だっこしてやー!」
「あーもううるさいな!」
 いい加減にしろと怒鳴ると、水都が軽く泣きそうな顔になった。
 そして
「だっこやで!」
 とうとう最後通牒のように告げる。八重が「命令形かい・・・」と軽く遠い目をする。
 ええい、仕方のない。
 とうとう明日には筋肉痛に挨拶する事を決定した。
 ぐいっと片手で水都を抱き上げ、すぐ不満そうな顔になる美琴をも抱き上げる。
「うぐ・・・ッ」
 両腕にずっしりかかる重量。
 全く兄というのも楽じゃない。

「おーい兄貴!」
「また寝てはるわ・・・」
 呆れた声の弟達はそんな千年前の事などすっかり忘れて、居眠りする八重を見やる。
 全く報われないものである。