香川県はうどん県です

 沈黙が三人を襲った。
 うっすらとは思っていたのだ・・・。彼がもう引き返せないところまで来ていると。
 だが、あんな白い粉を扱う彼を、何処か羨望の目で見てしまっていた事も事実だった。
 それどころか、時折その生み出された者のうまい汁を啜り、悦楽へと浸ってしまっていた・・・。
 それが彼の手元の熱さにどんどん火を点けるとも知らずに・・・。
 ただ、一言、絞り出すように高知は問うた。
「香川・・・もう一回言うてくれ」
 香川は少年らしさを失わない真っ直ぐな目で再び宣言した。
「香川県はうどん県です」
「公式がネタとして完成されすぎじゃ!」
 四国達の絶叫はこの物語を記す筆者の心の叫びでもある。

 事の発端は、ああ、そういえば、大阪府知事がこの発端を「はったん」と言っていたのに誰もツッコンでないのは何故なんだろうな・・・。
 いきなり現実逃避してしまったが、香川が県のHPでこんな宣言をしたところからだった。
「香川県はうどん県に改名しました」
 多くの国民がこのサイトに押しよせ、一日で17万アクセスが殺到するという事態に・・・。ちなみに某奈良県在住の小説書きも例外ではなく、ネタにしようと速攻ブクマした。
 だが・・・それはあくまでネタだと思っていた・・・。
 費用は2300万円を超えたが・・・「ははは、ハリウッドに比べれば・・・ねえ?」と必死の否定を続けてきた。
 既に・・・既にうっすらとは気づいていながら・・・黙認をしてしまったと取られても仕方ないだろう。
「へえー、僕もミカン県にしょうかなあ」
「シリアスウウウウ!」
 ちょっこっちは一生懸命このシリアスな雰囲気を保とうとしとんじゃコラ!
 と、いう高知の悲鳴を愛媛のほけほけした声がかき消す。
「あーでも、後追いし過ぎかなあ?」
「そういう問題でもあるけどそれは後で話そ! どうせ愛媛兄、和歌山にミカンの生産量抜かれてるやろ!」
「ははー」
 巨大な銛が高知の前に突き立てられる。
「もっかい言うて?」
 愛媛県、元海賊。その眼光は瀬戸内を射抜くように鋭く、先ほどの一メートルを超える銛は片手で操られた。
 コタツを見事にかわし、的確に畳にだけ穴を空ける正確さは、確実な狙いしか考えられない。そしてその重量を考えると・・・。
「って何でこっちにシリアスになっとんじゃ!」
 高知のツッコミが遅れたのも仕方あるまい。その銛はコタツで胡坐をかいていた高知の男性的に非常に大事なところをかすめる寸前だったのだから。
「その畳代、あたしは出さんきんな」
「え!?」
「愛媛兄ちゃん、自分で壊したものは自分で弁償するのは当然じゃろ?」
「う、正論」
「徳島ーーー! 俺の大事な所より畳を心配か!?」
 高知の悲鳴に徳島は冷静に返す。
「畳代の心配やきん」
 ところで、この中で愛媛のみ「兄」、扱いされているのは、昔の名前のイヨという言葉が長女を指していた事に由来する。じゃあ何で男なんだとかそういう事には触れないで戴きたい。
「何で今その注釈入れた!?」
 ち。うるせーな。
「まあ、そういうことやけん」
 香川が去ろうと・・することなくコタツでミカンを剥きはじめるのを慌てて制す。
「待ち待ち! 今後俺らお前の事を「うどん」呼ぶじゃか!?」
「え? そこはケースバイケースで、真剣な場で「うどん」呼ばれたら困る」
「凄く的確な指示が入ってきた! 正味あれやで! 人前で「おーい、うどーん」とか呼ぶの恥ずかしいぜよ!」
 必死の高知だが、他はミカンを剥く手を休めない。
「ほうやったら今まで通り香川って呼んだらええけん」
「愛媛兄は何でそんな受け入れるのが早いんじゃ!? 幼気な子供が中二ネームを越えたネーミングをしようとしとるじゃが!?」
 幼気な子供なのは容姿だけだが、という事は言わず
「ああ、これ」
本日の毎日新聞を見せる愛媛。
『郵便事業会社、「うどん県とあっても郵便番号から郵便物を届ける」と柔軟な姿勢』
「上から指示があればしょうがないけんねえ」
「徳島・・っ」
「要潤イケメンじゃ・・。大阪様には負けるけど」
 ・・・・・。
「俺達四国四県揃って一体じゃろ! 何で全員に宣言するのが決定後なんじゃ!?」
 それはあまり団結してないからです。と、高知だけハブられた訳ではない事を記し、筆を置く。正直、公式が完璧すぎてネタが無理だった。

 香川県の公式サイトはこちら http://www.my-kagawa.jp/ [ch0]