2016年新年会

「ヘヴンズ・ドアーだと思った? 残念! Ziziziジパングでした!」
 ……暫し沈黙。
「おら……やらない方がえがったけ……?」
「秋田あ! いや、誰かやらんとなんねえごとだったべ! 今年まどマギ? とか誰も思ってねえ! 大丈夫(だいじ)だ!」
 一瞬で下がるテンションに、速攻でフォローに入る山形。東北男子の鑑である。
「山形、一杯やらまいけ?」
「富山、なした急に」
「ものすごい親近感を感じて。それはもうものすごい親近感を感じて」
「僕も混ぜてくれん?」
「香川……」
 隣県フォロー組、結成。
「なんでま……ものすごい胸が痛い」
「四国の玄関口、頼りにしてるけん」
「いつも頼りっぱなしですまんき……」
「いつか関西に入るきん、それまで堪忍」
 反省する石川、愛媛、高知と裏切る気満々の徳島である。
「っていうか、うちもう関西やない? 天気予報とか」
「徳島、その話題は三重と新潟にデリケートな話題やきん」
 やはりフォローに入る香川の後ろで、所属はっきりしない組がダメージを受けている。しかし正直、所属何処だ。
 こちら場所は東京新宿某居酒屋。全国都道府県の具現化達が、新年会を行っているのである。
「こんばんはー」
「遅くなって悪ぃ」
 座敷に姿を現したのは、長野、山梨。長野は笑顔でそっと山口に近寄って、笑顔で肩を叩き。
「気にしなくて大丈夫だよ」
 頽れた山口を広島と岡山が取り囲む。
「花燃ゆの事は勘弁してつかあさい!」
「色々無理があったのよ! はじめから!」
 そんな可哀想な三人をバックに、
「大河、「真田丸」よろしく」
とキメる長野。鬼か。しかも、
「俺も舞台になるねんでー。マジ高野山パないっしょお」
乗っかる和歌山、悪魔(マーラ)か。
「お? 北海道は欠席づら?」
 山梨の指摘に、岩手が
「吹雪で飛行機が飛ばねぐて。それはもうひっでえ吹雪らしい。まあ、視界が聞かねえ事ぐらいいつもの事だけっじょも」
と答える。
 宮城が言葉を継ぐ。よく見ると、岩手の宮城の目が死んでいる。
「それはもう……それはもうむなげえ(可哀想)くらいに残念がって……残念がって……。福島の携帯に1時間に一本メールが入り、2時間に1本電話が入る」
「福島、弟さん最早ストーカー通り越してメンヘラじゃねえか?」
「わだすの弟に限って、そんな女々しい事はねえ」
「いや、現実見ろ? またメール鳴ってる」
 安定のシスコン弟北海道。今年も目標は福島との結婚のようだ。
「それで、九州沖縄勢はなんであんなにぐったりしてるんだい?」
 長野の指摘に、長崎が顔を上げる。
「飛行機で来ようとしたら……沖縄組が遅れて、飛行機が行ってしもて、慌てて羽田から成田に切り替えて、成田空港で迷って、新宿までの乗り換えで迷って、新宿駅ダンジョンで迷って」
「ああ、新宿駅は最近ますますダンジョン化を増しているよね」
「で、東口に出て、歌舞伎町に迷い込んで、なんか道に倒れてる人がいるから声をかけたら」
 フラグ。
「あたしは「それ、酒と違うばってんやめときんしゃい」言うたんやけど」
 福岡、待て。理解できる貴女も怖い。
「いきなりあたしに抱き着いて来て、その瞬間、熊本と鹿児島と福岡のスイッチがはいって」
「ほんと宮崎は気の毒ばい」
「いきなり抱き着かれるなんて気色悪かー」
 たぶん、佐賀はパンクファッションだし、大分は逆にジャージだから、普通に可愛い恰好してる宮崎に行ったんだろうな。女組で福岡と結(沖縄)がまぬがれたのは運だろう。ところで、こ・う・は・ん!
「LINEで仲間呼ばれたが、ちゃんと倒しもした」
 鹿児島、それは、警察沙汰ではないかな? なんでみんな服がよれよれなのかな? 貴方と熊本に至っては、返り血とかついてるのはなんでかな?
「頑張ったんだよ、福井。労わっておくれ」
「自力で乱闘せず、早く警察を呼びたまえ。もういい大人だろう」
 相変わらずの熊本のヤンデレをスルーするクーデレ福井であった。と、いうか、福井はいつデレるのだろうか。クーしか無い気がする。
 視線を変えて、関東組と関西組。
 今日も見事にオシャレに決めた神奈川に、京都が食いついている。
「よろしなあ、ピアスって。アレルギーとか大丈夫なん? 病院であけなアカンねやろなあ。穴空けてるの隠すことはできますのん?」
「俺のカッコ良さにシビレルのは当然の反応だけど、ジジイいい加減落ち着け?」
 相変わらずのミーハー京都様。
 奈良が隣で
「京都も若いなあ」と茶を啜る。
「ってかさー、今日、奈良と京都二人とも和服だべ? 並ぶとそっくりだな!」
 千葉の指摘に、ちょっと落ち着きを取り戻す京都。
「へえ、おおきにやす。まあ、兄弟やからしゃあない云いますのんか」
「いやー、ほっとんど同じだべ。京都の髪伸ばして眼鏡かけさせたら奈良になるっぺ」
「へえ、それはそれは。奈良はん、僕らももっと仲良うせなあきまへんなあ」
 言葉を継ぐ茨城に、京都が笑顔で答える。が、更に落ち着いている。
「ホントにまるきり同じだな。和服もお揃いみてえだし」
「おおきに、やっぱり兄弟言うんは似るもんやなあ」
 群馬、そろそろこの異様な落ち着きに気付かないか。
「ほんとに見分けがつかねえ」
 栃木、おい、栃木。
 関東の紅一点埼玉に、ざっと関西の紅一点兵庫が近寄り耳打ち。
「そろそろ男共止めて。京都の和服は今日の為に誂えた友禅やけど、奈良の和服は何十年も着古してるヤツやから」
「えっ、ごめん……うちのバカ共が」
「ええねん。京都もはっきり言わへんし」
 女同士の会話の後ろから、東京が入ってくる。
「店に全員揃った事を伝えてきました」
 流石東京ちゃん! タイミングが良いわ! と目をキラキラさせる埼玉。
「おや、大阪さん、元気がないですね」
 おい、東京、そこぶっこむか! 流石やな! と目をどんよりさせる兵庫。
「俺は……もう……日本一を目指すのに疲れてきた……」
 あ、政治的分裂、と察する東京。
「なんやねん……もうしんどいねん……」
「気にすんなや大阪、お前は関西で京都に次ぐ男や」
「いや、滋賀、それ、日本一どころか関西でも二番手ってことやん、俺。京都が一番なん? 日本一はハナから視野に入れるべからずなん?」
「何を凹んでんねんな、天下の台所が」
「奈良兄貴、大阪都構想が否決されると同時に、「観光だけやったら関西広域連合入ってもええでー」って来たん、地味にショックやってんで俺。完全に台所のみ狙いに入ってるやん」
「ち、めんどくせえ男だな」
「東京! 素に戻ってんで! ちょっとオリンピック開かれるからって何や! 俺かて万博開かれたんや!」
「あー、盛り上がったよねー、愛・地球博!」
 静岡、あんまり話を聞いてなかったのに、ジャストなセリフで入って来たな。大阪がNOOOOOO! と叫んで元気を取り戻したぞ。
「大阪って……マゾなのか……?」
「岐阜、元気が出たんならええでにゃあか」
 相変わらずダンディにお茶を飲む愛知。彼は酒が弱い。
 その向こうでは島根が鳥取に
「あら? アンタもう突出し食べちゃったの?」
と言うと、鳥取は照れたように
「最近お加わりになった方がズイボ(食いしん坊)で鳴らした方で……」
と淑やかに笑うも、いつものように隣に浮かんだ人魂の中には―。
「ちょっその方、浮草堂如きが扱っていい方じゃないんじゃないの?」
「島根姐さん勘弁してつかあさいやー。黄泉平坂がっばがばじゃろー」
「え? あたしのせいなのかな? 此処は謝っといた方が良いのかな?」
 中国勢全員の突出しを「ガフーッ」と食べると、人魂は消えた。ゲストありがとうございます。
「まあ、とりあえず、全員揃ったので乾杯にしましょうか」
 東京がそう言ったところで、座敷の襖を叩く音がした。
「店員さんか? 見てくる」
 襖を開けた熊本の目の前に立っていた大柄な男。
「来ちゃったっ」
「ほ、北海道……あ、あの……お疲れ……」
 どのような手段を用いて猛吹雪の中来たのか。
「今、熊本が引いてた……」
「あのヤンデレ熊本が引いてた……」
 ざわつく店内。そりゃそうだ。飛行機飛ばないんだぞ。青函トンネル? いつから移動?
「福島お姉ちゃーん、今日の服可愛いね」
「秋田が全部見繕った。えっがらこっちさ座れ」
「ストーカーに慣れ過ぎてる……」
「福島さんのガードがブレイカーってる……」
 ざわつく店内。しかし、東京は立ち上がった。
「えー、まさかの全員が揃うという嬉しいハプニングがありました。それでは皆さん、今年もキクムラサキ式をよろしくお願いします」
「かんぱーい!」
 流石首都! 上手く〆た! そんな訳で、出番が多かった県も少なかった県も、愛に変わりは無いので、今年もよろしくお願い致します。