某局のお土産総選挙を観ての、各都道府県のリアクション

 全国お土産総選挙。
 全国47都道府県のお土産の美味しさでランク付けしようという、恐るべき番組。
 そういうのって、みんなでワイワイ観たいじゃないですか。
 と、いう訳で各地で集まって観ているようですよ。(この小説は、番組やテレビ局などとは一切関係がありません。単に一視聴者が喜んで見ていただけです)

 近畿
 番組開始時
「僕はもうええねん……」
「おう自覚しとるか。かめへんかめへん。どうせ俺のたこ焼きが一位やからな」
「あんまり堂々と言わん方がよろしおす」
「大阪兄と京都兄自信マジパネエ」
「まあ、全国で売ってる優雅なうちのゴーフルは、もう兵庫って感じがせんかもしれんな」
 上から、奈良、大阪、京都、和歌山、兵庫である。あれ? 滋賀は? 滋賀さーん。
「僕は一応入ってればそれなりに宣伝になるし、まあええかな」
 滋賀さーん、目がぎらついてますよー!

 結果(ランク外は表記されません)
14位奈良県 柿の葉すし
10位滋賀県 バームクーヘン
「マジで!? マジで!? 何で!?」
「奈良兄、自分で「何で」言うたらあかないしょお」
「……」
「……ま、まあ、皆さん食べなれてはるよって、わざわざ投票しはらへんのですやろ」
「……」
「大阪! 本気で落ち込みないな!」
 京都が強がりつつも大阪を(珍しく)励ますが、彼が復活する兆しはない。個人的にだが、551の豚まんなら上位にランクインしたのではないだろうか。
「まあまあ、和歌山、ほっときー」
 優雅に紅茶を淹れ出す兵庫。ゴーフル陥落程度では落ち込まないのか。
「兵庫姐は余裕やなあ」
「え?うち、何も見てないし?」
「え?」
「いや、うちずっと紅茶飲んどうし。テレビとか観てないし。知らんし。和歌山、何知っとう? 最初から諦めてたアンタがうちの優雅さと美しさの何知っとうよ!?」
 般若を思わせる現実逃避に、思わず後ずさる和歌山。女性の扱いに慣れた彼は知っている、この場の対処法を。
「滋賀兄、さっきから電卓叩いて何やってるん?」
 それは! 話題を変えての逃亡!
 まあ、確かに気になる。大喜びしているが、それだけの奈良に対して、彼はランクインを見るなり電卓を叩きだしたのだから。
「ああ、この番組からの収益の計算」
 さらっ。
 商人はこういう男だ。

北陸

番組開始時
「僕のとり野菜みそが一位でしょー」
「んなもん誰も知らないっちゃ。俺のますのすしが一位に決まってっちゃ。早よ一位映すねま!」
「君たち、落ち着きたまえ。読書の邪魔だ」
 石川と富山が張り切るのに対し、眉一つ、眼鏡一つ動かさず、文庫本を読み続ける福井。
「福井ちゃん! 気にならないん!?」
「ちっとは気にしねま!」
 男二人のヒートアップにも、また眉一つ、眼鏡一つ動かさない。
「私の羽二重餅が何位か気にはなるが、この本の図書館返却期限が明日なのだよ。君たちのリアクションでだいたい分かるから、気にしないでくれたまえ」

 結果
5位石川県 とり野菜みそ
4位 富山県ますのすし
「あー、また、富山に負けたーーー!」
「またって、他に何か負けているのかい?」
「銀行とか色々……あ、いや!」
「まあまあ、俺の一個したなだけっちゃ」
「一個上なだけなのにその勝者の余裕! きー!」
 と、ここで男二人は気が付いた。
 自分たちはベストファイブに入っているが
 福井県だけランク外!
「あの、福井ちゃん、落ち込むことないで」
「うん、そう、落ち込むねま」
 しかし、福井はまだ眉一つ、眼鏡一つ動かさない。
 ただ、文庫本を閉じただけだ。
 しかも、きっちり読み終わっている。
「君たち」
「はい!?」
「北陸の味覚物産展の企画に入ろう。この番組の効果でとり野菜みそとますのすしの売り上げは格段に上がるはずだからね」
 商人はこういう女だ。

中部
番組開始時
「まあ、俺のゆかりと三重のなが餅で一位、二位だぎゃ」
 ダンディに静岡のお茶を啜る愛知。実は彼は酒に弱い。ダンディなのに。
「あれー、愛知さんが一位言うなんて珍しいやん。いつも真ん中くらいでちょうどい言うてるやり?」
 三重がお茶のお代わりを淹れながら、問う。自分が二位なのは自信があるようだ。グルメ県の自信が。
「や、俺の水まんじゅうもクソうめえよ」
 同じくお茶を啜りながら、その水まんじゅうをつるりと口に入れる岐阜。しかし、次の静岡の発言でむせた。
「岐阜ちゃんのその言い方ってウンコ美味しいって言ってるみたいじゃんね!」
 笑顔での発言。静岡……その巨乳は大人の女の証ではないのか。飾りなのか。
「それは岐阜がそういうのを美味いと思うような男だという事だな、静岡」
 間髪を入れず更に両方貶める長野。今日もどえす全開。
「えーとそれは……」
「静岡! まだ中に入ってこない山梨呼びにえくろ! 全く人見知りなんらからあいつは!」
「新潟ちゃんのその喋り方って萌えキャラみた」
「さっさと行けえええええ!」
 岐阜の絶叫で、二人は外に飛び出して行った。
「岐阜君、気にする事ないで?」
「三重、ほっといてやれ。男には男の見栄ってもんがありゃあでよ」

 結果
19位 岐阜県 水まんじゅう
18位 長野県 栗鹿ノ子
15位 山梨県 桔梗信玄餅
11位 三重県 長もち
 3位 愛知県 ゆかり

「見たか静岡! ウンコでねえぞーーー!」
「絶叫するのはやめたまえ。そういう事を。品性を疑ってやまない」
「お前が疑うの!? 長野!?」
「ああ」
 相変わらずどえすの餌食になる岐阜。
 外からは、山梨の
「わっちはやったづら信玄公ーーーー!」
という絶叫と、何故か新潟と静岡が胴上げされている光景が見える。
 女性二人、大変某所が揺れて見ものである。
「愛知さんやっぱりすごいねえ」
 まだのんびりとお茶を啜る三重に、愛知はちらりと視線を送った。
「三重」
「何や?」
 一瞬で取り出されるモバイルパソコン。
「工場の手配をやらないかんが」
 ふ、と三重は笑い交じりの息を吐く。
「ほんま愛知さんは仕事の鬼やねえ」
「仕事ができん男がおみゃあの好みか?」
 三重はクスリと苦笑した。
 モテるおっさんとはこういう男だ。

四国
番組開始時
「ポンジュース! ポンジュース!」
「全国どこでも売っとる」
「うどん! うどん!」
「全国どこでも売っとる」
 張り切る愛媛と香川に、マイペースなツッコミを入れる女、徳島。今日集まったのは彼女の家だ。何故なら、徳島が四国で一番気が利く女だから、居心地がよくて。
 人はこれを押しかける、とも言う。
「高知、いつまで寝とるん?」
 眼鏡を落とした事で軽く正気に返った愛媛に、高知はごろりと背中を向ける。
「高知は……何も無いき!」
「まあ、そうやねー」
「愛媛兄ちゃん、フォローせい」
 しかし香川も自分でフォローする気はないらしい。徳島は、というとマイペースにお茶請けのタルトを食べ始めた。

結果
17位 徳島県 かつ天
12位 高知県 海洋深層水入り細切り塩けんぴ

「高知には、高知には塩けんぴがあるんぜよーーーーー!」
「男泣きはやめ」
 号泣しつつ、塩けんぴをばりぼりと噛み砕く高知、 ぶっちゃけ怖い。
「かつ天そんな人気やったんやね」
 まだタルトを食べている徳島とことんマイペースだが、高知にバスタオルを渡してやるのはやっぱり気が利く女である。
「ふふふ……」
「香川、どないしたん?」
「けんぴが! けんぴが!」
「高知やかましい。香川?」
 その小さな体に喜びを震わせ、香川は、スマホを取り出す。
「早速キャンペーンの準備じゃ! 各都道府県の百貨店、スーパーに手配!」
 いきなりバリバリ仕事をやりだした香川。
 小さいながらも商人とはこういう男だ。
「あんなー、香川」
「なんなんな!? 愛媛兄ちゃん!」
 愛媛は全身から働きたくないオーラを出して言った。
「僕にえらい仕事が回ってくるキャンペーンはやめてな?」
 ほけほけ男子とはこういう男である。

中国
聞いてやるな。
もう一度言う聞いてやるな。
全滅とか言ってやるな。

関東
「全く、バラエティー番組をこんな巨大なテレビに映すだなんて、お金と時間の無駄ですよ」
 ぼやきながら、東京が壁一面に貼られた巨大テレビに番組を映し出す。
「神奈川ちゃんが無理言うからー」
「いや、お前だって見たいだろ? 俺たち関東がトップテンを埋め尽くす姿。特に、俺の輝かしいシウマイ!」
 埼玉の非難のまなざしも、効果はない。神奈川のナルシズムは今日も絶好調だ。
「栃木には負けねえべ!」
「そこで東京、埼玉、神奈川を出してこねえ辺りがせつねえよ、茨城」
 群馬の台詞に茨城はちょっと黙った。代わりに栃木が
「餃子うめえよ」
と少し余裕ぶる。
「まあ、俺はシウマイだけじゃないけどな、鳩サブレとか色々あるけど、まあ、シウマイが菓子系が多い土産物の中では異色って感じだべ?」
「はいはい、神奈川はすげえなー」
 扱いを心得てる千葉。
「まあ、人形焼が落ちる訳がありませんし」
「草加せんべいが落ちる訳ないしね」
 それぞれ余裕の東京と埼玉。
「別に東京土産として草加せんべい買って帰る人が多くてもいいしね。東京ちゃんの役に立てるんなら幸せっ」
 それは某奈良県在住の字書きが、ビックサイトに行くと、祖父の土産に草加せんべいを買って帰る事に触れているのか。
「あ、でも、いっそ物でも良かったかな? いや、それはセンスが各人違うから無理だよなー」
「神奈川は色んなもんあるからなー。千葉は人が沈めやすいくらいだべ」
 さらっと千葉からダーティすぎる発言があったが、無視することにした。

結果
9位 神奈川県 崎陽軒のシウマイ
6位 栃木県 冷凍生餃子
「お前ら! そんな落ち込むんじゃねえ!」
「お前らが劣ってた訳じゃねえ! ただ俺が素晴らしすぎただけだ!」
「黙ってろ神奈川」
 最初から何かを捨てていた、千葉と群馬に抑えられ、神奈川もようやく黙る。
 ようするに、茨城、東京、埼玉が三人そろって、椅子から下に崩れ落ち、項垂れているのだ。
「逆にこれは気まずいべ……」
 群馬が何か慰めるようなものを考えるも、彼の頭にはギャンブルで大勝するのと、萌キャラくらいしか浮かばない。
「……な、なあ」
 声をかけようとしたその瞬間、東京はすっと立ち上がった。
 流石は首都、この程度でへこみはしない。
 そうだな、と思いかけたその瞬間。
 バキイッ。
 液晶が砕ける音が響いた。
 東京が珍しく満面の笑みを見せた。
 テレビを殴り割った拳から、血をだらだら流しながら。
「おめぇら! 中華食いに行こうぜ!」
 はい! と全員を従わせられる、首都とはこういう男である。

東北
番組視聴前
「おら達の特産物映るかな、きっと映るべな!」
 最初っから大はしゃぎの秋田と、
「きっと映るべ。映らねがったら雪のせいだ」
と最初っから駄目だった時のフォローを入れる山形。
 秋田はテンションが下がるとどん底になるため仕方ない。
「21、22、23」
「青森ー、福島のCM中の片手腕立て伏せをやめさせてくれ」
 宮城が自分で言えないという情けなさを見せるので、青森は仕方なく言う。
「福島、気になっがらやめ」
 相変わらずミリタリーファッションの福島は首を傾げながら
「そはすまね。わだす、昔から体弱えから、鍛えんのが癖になってんだ」
「知っってっべ。おめ、昔っがら東北を守る盾だったべな。だども、テレビくらい落ち着いて見れ」
 岩手も読んでいた本を置きつつ言う。
 仕方なくコタツに入る福島だったが、秋田のテンションが完全にハイなのに気づき、やや今後が不安になった。
「福島! 二人入ったら、儲かったお金で服買いに行くべ! いっそ東京まで行っちまうべか!? きゃーーー!」
 ついつい悪い結果になった時のことを考えてしまうのは、東北人の悲しい性か。
結果
20位 岩手県 かもめの玉子
13位 秋田県 稲庭千温飩
8位  青森県 気になるリンゴ
2位  宮城県 厚切り芯たん塩仕込み
1位  北海道 生チョコレート【オーレ】
「福島、山形、気にするごたねえよ」
「んだ。半分は落づる計算だ」
「ほれ、かもめの玉子食(け)」
 フォローする、宮城、青森、岩手。
 とっさに落ちた仲間を心配する東北。
 何故なら
「おら……絶対みんな通ると思って……うわあああ、山形、福島すまね! っていうかなして入ってねえべーーー!」
秋田がマイナス方向に吹っ切れるからだ。
「おらは気にしてね! むしろ何か気持ちええ!」
 山形がマゾ気質を発揮しているが、もう止めない。秋田の方が大変だから。
 ?
 いつもは同じく秋田のフォローに回る、福島がフォローしてない?
 っていうか、まるで自軍の動きを見るかのように、全身入る窓に貼りついて、庭を伺ってる?
「なした? 福島」
「ほとんど予想できていたトップテン入り……呼んでも来ねえ集会……来る!」
「え?」
 次の瞬間、バリバリバリバリという爆音。
「な、何だあ!?」
 動揺する周囲に、福島が冷静に答える。完全に武士の瞳で。
「ただの軍事用ヘリだ。気にする事ぁね」
「いや、気にするよ!? ここ俺んちだべ!?」
 宮城が悲鳴を上げるが、それも爆音にかき消される。
 同時になる福島の軍用無線(何故そんなものを持ち歩いている)。
「こちら福島」
「いや、なしてそんな普通にやり取りしてんだべ!?」
 それを軽く無視して、無線は嬉しげな男の声を発する。
「お姉ちゃん! 僕が一位だったの見てくれた!? 一位になった記念に、生チョコレートをヘリ一杯に持ってきたよ!」
 福島は眉間を険しくする。
「北海道……
「何、お姉ちゃん」
「気持ちは嬉しいけっじょも、わだす一人では食いきれねがら、お裾分けしてもえが!?」
 そこじゃねえよ!!
 東北全員の思いが重なる中、シスコン弟の
「勿論だよ! でも、お姉ちゃんもいっぱい味わってね!」
という声がかすかに聞こえた。

九州
番組視聴前
「まあ、カステラでも食べ」
「長崎余裕ばい……」
「カステラという黄金をもってるからな……」
「ばってん、おなごに負けては九州男児の名が廃るたい!」
「よう言うた熊本! それでこそ男じゃ!」
 熊本と鹿児島ががしっと腕を組むのを見ながら
「みんな入ってると良かねー」
と宮崎はのほほんとした。
「大分、ちょっとくらい起きてテレビ見んしゃい」
「GWの人混みでつかれた。よだきい」
 福岡の誘いにも、大分は布団に転がったままだ。
 ちなみに、此処は熊本宅である。
 よその家で一人だけ布団を借りる女、大分。大物だ。
 しかし、この部屋。
 壁、一面に福井の写真
 床、福井の写真の抱き枕。
 天井、巨大な福井のポスター。
「熊本、息苦しくない? 暮らしてて」
「何でじゃ?」
「とりあえず、方言戻っとるよ」
「おっといけない。福井とお揃いにするんだったよ。口調を」
 この灼熱のような愛情は、マグマのようなものだと、全員理解している。訳すと、どうしようもないものだ。
 まあ、どうやら両想いのようだし、いいだろう。
 身内が警察のご厄介になる姿は見たくない。
 ましてや、こいつは執念だけで脱走できそうで怖い。
「寒い……」
「寒すぎる……」
 火の国の男の情熱も物理的には温めららないらしく、こちらは二人で毛布にくるまっている沖縄組、結と美。
 何でもいいから気を紛らわせてくれ、というのがありありと伝わってくる。
 それに出されるものはカステラだ。
 カステラ、自信の表れなんだろうな。
「さあて、あたしがスポット当てられるのを見よ」
 長崎がテレビをつけた。

結果
16位 宮崎県 チーズ饅頭
7位  鹿児島県 さつまあげ

 全員無言だった。
 まさかすぎた。
 長崎のカステラが落ちる事だけは無いと思っていた。
 だって、カステラと云えば何処思い浮かべる?
 オランダか、そうでなければ長崎でしょ? そうでしょ?
「……」
 全員が視線で、誰か口火を切れ、と言い合う。
 分かっている。
 誰か何か言わなくてはこの場は収まらない。
「よし、福井に落ちたのお揃いだって電話して来よう!」
「熊本おおおお!」
 口火の切り方がこれか! と全員が絶叫する。
 いや、唯一絶叫してない県が居た。
 と、いうか、一切台詞の無かった県が居た。
「あたし、一回も映らんかったばい……」
 佐賀県、観ていた限りでは放送中、一回も映らなかったんですけど。(もし映っていたらごめんなさい、と先手を打っておくけど、たぶんホントに無い、と思う作者)