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ハードボイルドダークファンタジー多め。銃と刃がrock 'n' roll! 超重量級の物語。 毎月最初の金曜日更新

忠実なる猛犬2

 敵の形態。地虫。
 巨大なムカデやまるむし。
 地を這う虫の兵。
 蠅の王の兵。飛べない虫しかいない兵。
 命令:蠅の王ベルゼブブの羽をもぐ。
 痛み。
 虫のギザギザした足。
 痛み。
 虫のするどい顎(あぎと)
 流出。
 自身の赤い血と虫兵の黄色い血。
 頭部に突き立てた打刀を下方に引き下げる。
 ”開き”のように虫兵の体が頭部から裂けていく。
 腹部に到達すると、左手にかみついていた顎が外れる。
 空間のひび割れから短刀を抜き、左手に握って背後を刺す。
 痛み。
 背後の虫が死にもがく。
 短刀をひび割れに戻す。打刀を引き抜く。
 呼吸が上がる。
 両手に刀を握る。
 首接続部をにらみ据える。
 咆吼。
 首を跳ね飛ばす。
 関節部が外れる音。
 顎をのぎしぎし音。
 這いずる足の音。
 音。音。音。
 数が多い。
 斬る。
 多すぎる?
 斬る。
 多すぎてもやる。
 斬る。
 羽をもぐまでやる。
「おいビッチ」
 カロルの声。
「まさかもうスタミナ切れか?」
 納は答える。
「大丈夫。ちゃんとがんばる」
 カロルの舌打ち。
 銃声。
 サブマシンガンの一掃意図。
 銃声に混じる虫の音。
 生きている。
 まだたくさん生きている。
 多すぎる。
 ちゃんと全部いなくしないと。
 正しく0にしないと。
「勘違いするなよ」
 カロルの声に視界を開く。
「こいつらの脳みそは虫けらだ。数だけドカドカあるだけだ。ぶち殺されるために放り込まれた連中だ。そんな連中をマトモに相手にしたら、どうなると思う?」
「……時間がかかる?」
「遅漏の客がきたときを思い出せバカガキ。時間を食う上に疲れるんだよ」
 解。
「これは……スタミナ切れを待っての時間稼ぎをされているの?」
「やっとわかったか。真面目にコツコツ殺してたら思うツボだ。東に追い散らせ。東に行かなくても、あの白い女の方へ追い散らせ」
「わかった。……そっか……カロルはすごいひとだったんだね」
 またしても舌打ち。
「生き物ってのはな、死ぬとわかったら子孫を残したくなるんだ。ほら、あっちでもこっちでもお楽しみ中のヤツが混じってるだろう。だが、相手にする程度の脳みそがあれば、こんな非常時に”始め”ることはない。子種がガキになる前に死ぬからな」
 少し考えた。
「やっぱりすごいひとじゃないか」
 三度目の舌打ち。
「ならすごいひとの言うとおりにやれ」
「うん」
 カロルは両手の【アベル】を放す。
 サブマシンガンは垂直に落下し、影の中にとぷんと沈み、消える。
「俺が喰われている間に、一気に蹴散らせ」
「わかった」
 虫の群れに飛び込む聖職者。
 生身の餌。
 歓喜する顎の音。
 噴き上がる鮮血。
 我先に食らいつく虫共。
 貪る連中。
 喰われる聖職者。
 かじり取られた肉片。
 血だまりと化す肉体。
 再生。
 飛び散る細胞。
 赤。
 再生。
 カソックが踊る。
 喰われる。
 再生。
 移動。
 赤。
 血液。
 赤。
 血液。
 吸血鬼!
 虫たちは本当に虫の脳のようだ。
 血液のにおいを嗅いだら、かじらずにはいられない。
 そこに刃を突き立てられたら、逃げ出さずにはいられない。
 追い立てろ。
 追い立てろ。
 噴き上がる血液。
 追い立てる!
 遠くから【カラマーゾフ】の光と音。
 七竈納とカロルの担当は、ユキと東の海へ敵を追い立てること。
 ユキの担当は、東の海へ敵を追い立てること。
 虫が目の前にはいなくなる。
 血だまりから腕が突き出す。
 腕、胴体、足、頭。
 完全再生。ノストフェラトゥ。ヴァンパイア。
 口を開く。牙が生える。
 次に舌。
 話す。
「のろま」
 皮膚が紙のように白い。
「ごめんなさい、カロル、体調悪いの?」
 答えず、影のなから輸血パックを取り出す。
 飲み干す。舌打ち。
「足りない」
 無理をさせてしまったんだ。
 襲い来る罪悪感。カロルは予測済みのように、東を指さす。
「海に何があって追い立ててたんだ?」
「僕も知らない。あの、それより」
 謝罪をかき消す爆発。
 海から噴き上がる水柱。
 唖然と眺める2人に、ジョーイからの通信説明。
『マリュースクだよ。
 海にずっと潜んでいた。
 彼は連続で24時間息継ぎなしの潜水が可能で――。
 ナヌークを使えるから最大火力ってわけじゃない。
 彼の最大火力武器は、水だ。
 潜水中の水すべてを炸裂させる、それがマリュースクの業。
 と、いっても最低36万リットルの水が必要だし、プール1杯の水すべてを炸裂させちゃうもんだからね。場所を選ぶことこの上ないん――』
『納! 逃げろ!』
 通信回線に割り込み。
「蛍!? 逃げたはずじゃ……」
 納の声を遮り、蛍は焦った指示を出す。
『逃げろ! あんなヤツ絶対手に負えねえ!』
 通信、意識、同時に切断。

 

≪空六六六ぷらす!≫

 

こちらはおまけですので、設定及び人間関係が本編と異なります。

 

株式会社空六六六

 

限界値の営業課
社員(営業課)「もう嫌だあああっ! 俺を入力事務の壁に埋め込んでくれえええッ!」
ジョーイ(33歳営業課)「しっかりしろ! 何があった!」
社員「入力事務の七竈さん(24歳♀)、タイピングに集中してると瞳術使ってるカンジになりますよね? あんなにかわいいのに甲賀弦之介になりますよね? ワイルドアイですよね?」
ジョーイ「言いたいことはなんとなくわかる。それで?」
社員「マリュースクさんって常日頃から愛想ないですよね? 集中力もあんまないですよね? あんなにちいさいのにオーラが常に「殲!」ですよね?」
ジョーイ「うん。言いたいことは雰囲気でわかる。それでどうしたの?」
社員「さ、さっき……。入力事務に行ったら……。破軍の瞳術状態でタイピングしてる七竈さんに、マリュースクさんが「口を開けなさい」って言って。そしたら七竈さんぱかっと口開けて。そこにマリュースクさんがいちごガルボ放り込んで! 「少し休憩しなさい」って! いきなり空気がらき☆すたですよ! お願いします! 俺をあのオアシスの壁に埋め込んでください!」
ジョーイ「落ち着いて。君は疲れているだけだよ。それは事故物件を作成しておしまいだ。ゆっくりと深呼吸して。大丈夫、僕は味方だ」
蛍(24歳♀営業課)「ちょっと、この手書きのメモ。何語かわかんねえから入力事務で翻訳してもらって来て」
ジョーイ「まかせて。行ってくるよ」
蛍「味方の裏切りが早いんだよ」


2020/05/10